?紛争の内容
夫(40代公務員) 妻(30代パート) 子1人(9歳)
妻に借金があることが発覚し、それを夫が問い詰めたところ、妻が子供を連れて自宅を出て行ってしまいました。
妻は夫名義のカードでも借金を繰り返しており、また夫名義の生命保険を無断で解約しして、その解約返戻金200万円を費消していたことが分かりました。
夫は離婚調停を申し立てましたが、金銭給付(慰謝料、財産分与)で話がまとまらず、不成立になりました。
夫の依頼を受けて、訴訟提起の段階から代理人として活動することになりました。
?交渉・調停・訴訟などの経過
訴訟の場においても、妻は借入金や解約返戻金の使途を明らかにせず、貸金業者に対する調査嘱託を活用して取引履歴を開示してもらったものの、それらを知る手掛かりは得られませんでした。
一方、妻は離婚原因として、「夫から毎月3万円しか生活費をもらっていなかった」ことを主張してきましたが、これに対しては、夫婦の生活費口座の過去10年分の取引履歴を取り寄せたうえ、妻が持っていたカードによる毎月の引き出し合計金額を洗い出し、平均して毎月15万円以上の十分な生活費を渡してきたことを立証して、その主張を退けました。
また、妻は、費消した解約返戻金の持ち戻しを拒否する一方、公務員である夫の退職金を財産分与の対象とするよう請求してきました。法律上の解釈は措くとして、これまでの経緯からすれば、退職金までをも財産分与の対象とすることに夫の納得が得られるはずもなく、裁判所にも間に入ってもらって、これを除く方向での和解案を提示してもらいました。
?本事例の結末
和解離婚成立
親権者は妻(争いなし)、慰謝料の支払いなし
財産分与としては、退職金を除き、現に今ある夫婦共有財産(預金)の2分の1を夫から妻に支払うとの内容です。
?本事例に学ぶこと
本件の夫はまだ40代で定年退職まで15年ほどありましたが、国家公務員であり、将来の退職金受給がほぼ確実といえ、妻側に強硬に主張された場合には、現時点での見込金額を財産分与の対象に含めるという判断になる可能性がありました。
夫が、保険の解約返戻金の持ち戻し等で譲歩し、判決になるのを避けて和解に応じる決断をしたのは適切であったと思われます。