姉弟のうち1人の親権者が父親と認められたうえで離婚が成立したケース
■紛争の内容
夫(30代自営業) 妻(30代パート) 子2人(長女10歳、長男5歳)
夫婦は数年前から別居しており、当事務所に相談に来られる前から、夫婦の間で子供をめぐる争いが峻烈化していました(監護権者の指定・子の引き渡しの審判、及び審判前の保全処分)。
別居中の子2人の監護権者を妻と指定する審判が確定し、子の引き渡しの強制執行が実施された後、妻が離婚訴訟を提起。
子2人の親権を争いたいと希望する夫側から依頼を受けて事件を受任しました。

■交渉・調停・訴訟などの経過
親権以外の争点はなく、家庭裁判所調査官による調査が実施されました(子との面談、妻・夫双方との面談、学校や幼稚園の関係者からの聞き取り等)。
長女は当初から、はっきりと「パパと一緒に生活していきたい」と主張しており、調査報告書にもその旨が明確に記載された一方で、長男はまだ自分の希望をはっきりと主張できないところ、母親(妻)による養育監護の状況に特段の問題はないものとして、このまま母親のもとで生活するのが望ましいとされました。
一審の判決は、上記調査官調査の結果をなぞる形で、長女の親権者を夫、長男の親権者を妻と指定して離婚を認めました。
夫も妻も、双方がこれを不服として控訴したが、控訴審でも一審の判決内容が維持され、妻はさらに最高裁へ上告した。

■本事例の結末
妻の上告受理申立は棄却され、長女の親権者を夫、長男の親権者を妻と指定して離婚を認めた原審が確定しましたた。

■本事例に学ぶこと
圧倒的な母性優先が支配する日本の親権争いにおいて、男親が親権を取るのは極めて難しい。
しかし、本件のように、ある程度の分別がつく年齢に達した子が、明確な意思を持って男親と一緒に生活することを希望した場合、例え兄弟不分離の原則から外れることになっても、男親が親権者にしてされることが子の福氏にかなう、との裁判所の判断は妥当である。