特有財産を守って離婚及び離縁を成立させたケース
■紛争の内容
夫(50代会社員) 妻(30代パート) 子1人(12歳)
ともに再婚同士のご夫婦で、子ども(妻の連れ子)は夫と養子縁組をしました。
しかし、夫の両親との同居生活が始まった直後から、夫の両親による過干渉が始まり、妻はうつ症状を呈するようになりました。
限界を感じた妻は、子どもを連れて実家に戻りましたが、夫側は「勝手に出て行って嫁失格。離婚なら不動産を渡すように」と要求してきました。
この不動産は、妻が前夫から財産分与としていただいた物件でした。
相談に来た妻から依頼を受け、離婚及び離縁の調停を申し立てることになりました。

■交渉・調停・訴訟などの経過
別居に至るまでの経緯からすれば、妻から夫への慰謝料請求も可能な事案でしたが、妻の希望は「お金は1円もいらない。とにかく1日も早くあちらの家を縁を切りたい」ということでしたので、慰謝料も財産分与の請求も一切せずに、離婚と離縁のみを求めて申立を行いました。
同時に、調停では、不動産は妻の特有財産であって財産分与の対象とならないこと、妻には慰謝料原因となる行為は何もなかったことを主張しました。

■本事例の結末
夫側は納得せず、3度の期日を重ねましたが、最終的には離婚及び離縁(互いに慰謝料請求及び財産分与は一切しない)ということで調停が成立しました。

■本事例に学ぶこと
妻が前夫から財産分与として譲り受けた不動産が、後の婚姻における離婚時の財産分与の対象にならないのは明らかですし、本件では妻の方から慰謝料請求をすることは格別、夫の方から慰謝料請求されるような落ち度は妻にありませんでした。妻の持っていた当該不動産の価値が極めて高かったために、夫側はこのような主張をしたのかもしれません。
訴訟に移行することなく、妻の特有財産をきちんと守る形で決着がついて良かったです。