熟年離婚とはどのようなものか?普通の離婚と異なる点は?
熟年離婚について
熟年離婚とは
熟年離婚というものに法的な定義はありませんが、一般的には中高年を迎えた夫婦が婚姻関係を解消する場合を指すことが多いようです。中高年が当事者となるため、必然的に定年退職等の大きな状況変化を伴う時期の離婚となることが多いため、一般的な離婚よりも気を付ける部分もおのずと異なってくるように思われます。
熟年離婚とそうでない離婚での異なる点
通常の離婚において決めるべき事項としては、
・離婚するか否か
・(未成年の子がいる場合)親権者となる者の決定
・(未成熟子がいる場合)養育費
・財産分与
・慰謝料
・年金分割
が挙げられることが多いのですが、熟年離婚であるからといって決めるべき点が変わるわけではありません。ただ、熟年離婚の場合は、既に子が成人し、自立していることも多いため、親権や養育費について争いになるということはあまりないケースが多いでしょう。
これに対して、財産分与や年金分割については、その婚姻期間が長く、築いてきた財産も大きくなる可能性があり、また年金分割についてもその分割の対象となる期間が長いため、熟年離婚でない場合よりも問題になることが多いと考えられます。
今回は、その2点の問題の中でも、特に財産分与について詳しく見ていきたいと思います。
財産分与とは
財産分与とは、夫婦が離婚したときに、夫婦が婚姻中に形成した財産を清算するため分与をすることをいいます。
その趣旨は、夫婦が婚姻中に築いた共有財産を清算分配すると共に、離婚後の配偶者の生活の維持に資することにあるとされています。これを受けて、財産分与の内容には「清算的要素」及び「扶養的要素」があります。
ただ、単に「財産分与」といった場合には、このうちの「清算的要素」を指していることがほとんどですので、このコラムの中ではこの要素の意味での財産分与について扱うことにします。
熟年離婚における財産分与の重要性について
熟年離婚においては、上記のとおり財産分与というのは特に気を付けるべきポイントといえます。
不動産、預貯金、車や株式、退職金など、財産分与となる財産は多種多様です。婚姻生活が長ければ、その分分与の対象は広がる可能性があるといえます。
財産分与で請求できる範囲について
財産分与の対象となる財産は、婚姻時から別居あるいは離婚成立時までに築いた夫婦の共有財産です。
清算的要素という観点からする財産分与のことを「清算的財産分与」と呼ぶことがありますが、そこでは「婚姻中に取得した財産は、夫婦の一方の収入による場合でも、他方の協力もあって得られたもの」と考えるのが原則です。
たとえば、夫婦の一方が家事に専念をし、一方が働いて収入を得ている という家庭は、一方のみが収入を得ており、その者の名義で不動産や車を買う、などということが多いでしょう。預貯金なども、その者の名義の口座に入っているのが一般的なのではないでしょうか。
そうすると、家事に専念していた者の名義の財産は、ほとんど存在しない、ということもあるかもしれません。しかし、離婚の財産分与において、家事に専念していた者の財産は何もないから、その者には何も分与しなくてよい、とはなりません。
家事に専念してもらったからこそ一方の配偶者も仕事に専念できたという面は否めないでしょう。夫婦の協力によって得た財産は、名義がどうであろうと、実質的に見れば、共有財産であって、これらの財産を公平の観点から清算する というのが生産的財産分与ということができます。
したがって、特に「専業主婦をしていたから自分名義の財産は何もない」という方であっても、離婚に伴う財産分与できちんと相手方配偶者に対し清算をしてもらう必要があるのです。
逆にいえば、婚姻期間中に築いたものではない財産や、相続などの夫婦の協力に関係なく得られた財産は夫婦の共有財産とはいえませんから、分与の対象ではありません。このような財産を「特有財産」と呼んでいます。
熟年離婚において問題となる財産について
上記のように、財産分与の対象になる財産というのは婚姻期間中に夫婦の協力によって得られた財産です。
その対象の財産になるか否かの基準時は、原則的には別居日(別居せずに離婚した場合などは離婚時)となりますが、別居してから長時間経過してしまっている、という場合などは、分与の仕方にも問題が生じることが多いです。以下、特に問題になりそうな財産について触れたいと思います。
・別居後に減ってしまった預貯金など
これは、減った理由にもよるでしょうが、基準時はあくまでも別居日に存在した残高です。したがって、ある金融機関にあったはずの預貯金が0円になってしまったという場合でも、その預貯金は分けなくてもよいということにはなりません。ただ、その他にも全く財産が存在しないというときに、回収をどうするかという問題が生じうること否定できません。
・車や不動産など
これは、別居後に処分してしまったなどの事情があれば、その処分時の売却価格などを分与の対象とすることが多いと思われます。
処分せずに老朽化してしまった車などは、価値が別居日よりも下がってしまっている可能性も高いので要注意です。
・退職金など
退職金や退職手当は、それが労働の事後的対価・賃金の後払いと見られていますので、財産分与の対象となりうるものです。
まだ支給がされていなかったとしても、支給の蓋然性が高いのであれば財産分与の対象となります。既にもらっていた退職金等も、基準時において存在するのであれば、それは現金や預貯金等の財産として分与の対象になります。
分与する対象となるのは、あくまでも基準時の退職金等であり、しかもそのうちの婚姻期間に対応する額に限られますから、婚姻してから就職したというケースでない限りは、基準時の退職金等全額が分与の対象となるわけではない、ということは注意が必要です。
・相続財産や親族等からもらった財産について
既に述べているとおり、財産分与の対象となるのは、「婚姻期間中に夫婦の協力によって得られた財産」ですから、相続財産等は含まれないはずです。
しかし、婚姻期間中に得た給与等と、相続財産等が同じ預貯金口座に入っており相続財産等を得てから日々費消や給与入金が繰り返されていた場合、基準時における残高のどの部分が相続財産等(財産分与の対象にならない部分)であり、どの部分が給与等(財産分与の対象になる部分)か判別できなくなってしまうことがあります。
判別がつかない場合、これを「分与対象外」と言いきることはできないため、離婚訴訟においても、「特有財産」として主張できないことがあるので要注意です。
このような混在が生じないよう、相続財産等は、通常使っている預貯金口座とは別にしておくのがよいでしょう。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、17名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。