離婚の同意が得られなかったり、離婚条件が整わなければ、話し合いは長引き、調停離婚や裁判離婚も検討せざるを得なくなります。長期にわたり離婚の争いが続く「泥沼化」は、そもそもどういう場合に生じるのでしょうか。実際に離婚の長期化を生む要素がどのようなものか知っておけば、弁護士に相談したり、離婚の話し合いの準備にもなります。今回は、そのような泥沼化になりがちなポイントについて説明します。
離婚の泥沼化を招くポイント、何をしておいた方がいい?しない方がいい?
離婚のために要する期間について
令和2年度(2020年)の司法統計によれば、婚姻関係の調停事件は、その総数のうち半数以上が1年以内に終了しているとのことです。しかし、もし離婚の調停が不成立に終わり、なお離婚について争うのであれば、離婚訴訟を提起するほかなく、終局的な判決が出るまでに更に1年、2年とかかってしまうこともあります。
そこで、離婚について早期に解決するのであれば、離婚訴訟や、その前段階の調停に至るまでに、協議で離婚そのものや離婚条件を決めるということが望ましいといえます。
離婚のときに問題となる事項
通常の離婚において決めるべき事項としては、
・離婚するか否か
・(未成年の子がいる場合)親権者となる者の決定
・(未成熟子がいる場合)養育費
・財産分与
・慰謝料
・年金分割
が中心となります。
泥沼化を招きがちな事項
上記の「離婚の時に問題となる事項」の中でも、特に夫婦間で話し合いがまとまらず、長期化する要因となるのが、「親権者をどうするか」という問題と、「財産分与」の問題だと思われます。
何故親権問題と財産分与で揉めてしまうのか
離婚をする際、当事者間に未成年の子がいる場合は父母の一方を親権者と定めなければなりません。
また、離婚をした者の一方は、相手方に対して、主に婚姻中の共同の財産を清算分配するという目的で、財産分与を請求することができます。
前者の親権問題について、令和元年(2019年)の人口動態統計によれば、母が子全員の親権を行っているというケースが約85%となっています。
しかし、近年夫婦の生活スタイルの多様性や共働き夫婦の増加等に伴い、父母のいずれもが子の監護を行っており、父母のいずれが主たる監護者であるのかを確定すること自体が容易ではない事案も増えてきました。このような事情を踏まえると、現代日本の離婚問題は、必ずしも「母親が親権者となるのが当然」と言えない状況です。
また、後者の財産分与についても、何が財産分与の対象になるのか、どうやって評価し分与するのかという点で夫婦間に争いが生じることも多く、落としどころが決められないというケースが多くなっています。
夫婦間の主張で問題となる例(親権問題の場合)
・夫婦の一方の方が、「経済的に豊かで、監護体制が充実している」などと主張される場合
・「これまで主たる監護者だった母(または父)は不貞行為をしていた」などと主張される場合
・「これまで主たる監護者だった母(または父)は別居親の面会交流を認めないので不適切である」などと主張される場合
このような、監護体制や離婚に至る経緯、面会交流の可否や多寡が、親権決定にあたり問題となり、それによって夫婦間の意見がまとまらないことがあります。
夫婦間の主張で問題となる例(財産分与の場合)
・単身赴任の期間が長かったので、別居期間が長く、「夫婦の共有財産は少ない」などと主張される場合
・「夫(または妻)が預貯金を隠しているから、もっと財産分与の対象は多いはずだ」 などと主張される場合
・「自分の預貯金は独身時代に貯めたもの(あるいは相続で得たもの)だから、財産分与の対象にならない」などと主張される場合
・子名義の預貯金がたくさんあるが、「これは夫婦の共有財産ではないので財産分与の対象とならない」などと主張される場合
財産分与の対象となる財産は、別居日(別居をしていないままに離婚する場合などは離婚時となることもあります。)を基準として確定するとしています。財産分与の対象となる夫婦の共有財産を離婚時に清算するのは、基準日までに夫婦の経済的協力関係が続き、財産の構成にそれぞれが寄与していたといえるからです。逆にいえば、単身赴任などでもそのような協力関係が続いていれば財産分与の基準日にはまだ至っていないといえます。
その他、独身時代の貯蓄や相続財産、子名義の預貯金だから対象外というのも、夫婦の経済的協力関係によって築かれたものではないから認められる主張だといえます。
争いを減らすために必要なこと
以上のような争いが典型例とはなりますが、そもそもこのような主張が出ないようにする、あるいは主張に対し反論できるようにしておけば、紛争を長引かせてしまうリスクは減らせるといえます。
どのような対応をしておけば、主張や反論に役立つのかを検討してみましょう。
証拠を確保しておく
まず、調停にするにしても、裁判になるとしても、相手方配偶者に裏付けを示すことができれば、「判決になってもこのような証拠があるならば自分の主張は認めれないな」と相手方に考えてもらうことも可能ということが多いでしょう。
親権であれば、
・子の監護を日常的に行っている主たる監護者が誰かということをこれまでの育児歴の資料によって明らかにしておく
・自分が子の監護をする場合に、心身や生活状況が安定しており、子に望ましい住環境を提供できることを示せるようにしておく
などが重要でしょう。
なお、面会交流の可否は、子と別居親の関係がどうかということによって、必ず時も実施することが子にとって望ましいといえない場合もありますので、絶対的な要素とは言い難いと考えられます。
また、経済的状況が良くないという側が親権者になるとしても、それは他方の非親権者に養育費を支払ってもらえばよいのですから、双方の収入を明確にし、それに基づいて養育費を適切に定めればよいといえるでしょう。
これに対して財産分与に関しては、
・夫婦双方の財産を明らかにしておく、別居を予定していてもその前に相手方管理の財産も把握しておく(少なくとも、金融機関・支店名・保険会社名等を知っておく)
・自分の独身時代の財産や相続により得た財産などは、夫婦共有財産と混ざらないように別口座にするなど明確に分離しておく
・退職金等がある可能性がある場合は、制度の有無を把握しておく
・子名義の預貯金等は、それが夫婦の生活費から溜まったものか、祖父母らからのお小遣いなどの外的要素によって増えているのかといったことを記録しておく
ということ等が必要になるでしょう。
裁判などの相場を知っておく
上記のような資料などを集めたとしても、実際の経緯によっては自身にとって有利になったり不利になったりすることがあります。
その資料がどのように評価されるのか、これまでの裁判例に即して評価を知っておくことが重要です。なかなか一般市民の方が裁判例などを知り理解することは難しいので、この点は弁護士に相談するのが良いと考えられます。
グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、17名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。
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