こんにちは。弁護士法人グリーンリーフ法律事務所の弁護士 渡邉千晃です。
最近は、LGBTの尊重が求められていることから、同性婚を認めようという社会的風潮が高まってきているように思います。もっとも、同性同士での結婚が認められるようになれば、当然、離婚してしまうカップルも出てくると思います。
上記のような社会的風潮の高まりがあるとしても、現状、同性間での婚姻は法律で認められておりませんので、同性婚したカップルが分かれた場合には、異性カップルの離婚とは異なる検討を要します。
例えば、同性カップルが分かれた場合に、財産分与の請求をすることができるのかといった点や、相手が浮気したせいで破局に至った場合に、浮気をしたパートナーに対して慰謝料請求をすることができるのかといった点です。
上記の請求は、異性間のカップルが離婚した場合には当然に認められるものですが、同性カップルが分かれた場合でも、このような請求は認められるのでしょうか。
この記事では、同性カップルが離婚した場合に、財産分与が認められるのかといった点や、相手に対して慰謝料請求することができるのかという点をわかりやすく解説していきます。
同姓カップルの結婚について
まず、同性カップルの婚姻関係というのは、法律上、保護されているものなのでしょうか。
この点、令和2年3月4日の東京高裁の判決が参考になります。
上記判決は、同性婚について、「単なる同居ではなく、同性であるために法律上の婚姻の届出はできないものの、できる限り社会通念上夫婦と同様であると認められる関係を形成しようとしていたものであり、平成28年12月当時、男女が相協力して夫婦としての生活を営む結合としての婚姻に準ずる関係にあったということが出来る。」と判断しました。
すなわち、上記判決によれば、同性婚も、異性間の婚姻関係に準ずるものとして、法律上保護に値する関係であるということになります。
もっとも、同性間の婚姻関係について、最高裁が判断した判決はまだないため、地方裁判所でも統一的な判断はなされていない現状にあります。
同姓カップルが離婚した場合に財産分与が認められるか
財産分与とは
では、同性カップルが離婚した場合に、財産分与の請求は認められるのでしょうか。
まず、異性間のカップルが離婚する場合には、婚姻期間中に共同して積み上げた財産の分与を請求する権利が認められています(民法768条)。
これを財産分与の請求といいます。
もっとも、法律上、同性婚は認められておらず、民法は同性婚を想定していないため、同性カップルが分かれた場合の財産分与が認められるのかどうか、問題となります。
令和4年2月14日横浜家庭裁判所の判決
この点については、令和4年2月14日の横浜家庭裁判所の判決が参考になります。
当該判決は、「日本の法律は婚姻および離婚の当事者を『夫婦』または『父母』と規定するなど異性間でのみ認めていることは明らか」であるから、同性婚は、婚姻の実質的要件を欠くと判断しています。
そのうえで、「婚姻の実質的要件を欠く場合にまで内縁の夫婦関係と認め、婚姻に関する規定を適用するのは現行の法律の解釈上困難」と判断しています。
すなわち、当該判決は、同性カップルが分かれた場合の財産分与の請求については、これを認めないという判断を下したということになります。
当該判決の考え方
異性間のカップルにおいても、所与の事情から、法律婚ではなく事実婚(内縁関係)を選択するカップルがいます。
過去の裁判例では、内縁関係は婚姻に準ずる関係であるとして、婚姻に関する規定が準用されることが認められてきました。
同姓同士の婚姻も、内縁関係と同視しうると考えるのであれば、婚姻に関する規定の準用を認めてもいいように思われます。
しかしながら、上記判決は、法律上、婚姻は異性間におけるものを想定していることが明らかであるという理由で、同性婚を内縁関係と同等に扱うことは、法律の文言解釈の限界を超えて困難であると判断しました。
もっとも、上記判決は、一裁判例にすぎないうえ、LGBTを尊重しようという風潮は、当時よりもさらなる高まりを見せています。
したがって、今後、同様の事案が増えていけば、同性カップルの財産分与を認める判決が出てくる可能性も十分に考えられます。
同姓カップルが浮気した場合に慰謝料請求が認められるか
慰謝料請求とは
異性間の婚姻関係の場合、一方配偶者が不貞行為を行った場合、不法行為を理由として損害賠償請求をすることが認められています。
その根拠は、一方配偶者との不貞行為により、夫婦の平穏な婚姻関係が侵害されたことにあります。
同姓同士のカップルの場合にも、上記根拠が当てはまるか、問題となります。
令和2年3月4日の東京高裁の判決
この問題については、前掲した令和2年3月4日の東京高等裁判所の判決が参考になります。
当該裁判は、女性同士のカップルの一方が、男性と不倫したために、その不倫したパートナーに対して、慰謝料を請求した事案になります。
東京高裁は、同性婚も婚姻に準ずる関係として、法的保護を認めたうえで、パートナーと不倫相手の間で、「複数回にわたりペッティング(挿入を伴わない行為)に及んだこと」が推認でき、また、パートナーが請求者に対して不倫相手が好きだと伝えたことから、婚姻を解消するに至ったのであるから、損害賠償が認められると判断しました。
そして、慰謝料額としては、110万円(弁護士費用10万円を含む)が認められました。
本件では、女性同士のカップルでしたが、上記のような判断は、男性同士のカップルにも当てはまるものと考えられます。
すなわち、男性カップルの一方が、女性と不倫した場合には、婚姻関係に準ずる関係が侵害されたことにより、浮気をしたパートナーに対する損害賠償請求が認められる可能性があるということです。
まとめ
同姓同士のカップルが離婚した場合に、財産分与が認められるのか、また、慰謝料請求が認められるのかについて、解説しました。
LGBTの問題が大きく取り上げられるようになった現代社会においては、今後、同性カップルを巡る法律問題が増えてくると考えられます。
そのような問題に対しては、裁判所が法律の文言解釈により同性婚の保護を図るのか、はたまた、同姓婚を認める新たな法律が立法されることになるのか、今後の動向に注目です。
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