離婚後の苗字、変える?変えない?子どもの苗字はどうなる?

離婚をしたときに、まず影響があるのは、苗字(氏)です。離婚に伴いそれまでの戸籍から抜ける側は、それからどのような苗字を名乗るのか、そして子どもについてもどうなるのかということは、名前というものが日常生活に大きな影響があることから、多くの方にとって気になる問題かと思われます。そこで、今回は離婚をすると苗字はどうなるのかという疑問について解説します。

離婚後の苗字、自分はどうする?子どもはどうなる?

婚姻時と離婚時の苗字について

婚姻時と離婚時の苗字について

現在の日本の民法では、

「(夫婦の氏)第750条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。」

とされており、婚姻により、その夫または妻のいずれか一方の苗字(法律上は「氏」と表現しています。)を名乗ることになります。令和4年(2022年)の時点では、苗字の変更するのは、圧倒的に女性(妻)が多いとされており、全体の約95%であるとされています。

「妻が苗字を変えることが圧倒的に多い」という現状の適否は措くとしても、離婚の際、苗字をどうするかという点についても民法上の定めがあり、

「(離婚による復氏等)第767条1項 婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、協議上の離婚によって婚姻前の氏に復する。」

とされています。

離婚時の復氏の原則

離婚時の復氏の原則

民法第767条1項は、離婚時の原則を定めるものであって、結婚の際に苗字が変わった側は、離婚すれば元の苗字に戻ることになり、それは多くの場合妻側となっているということです。

離婚後も引き続き結婚していたときの苗字を使いたい場合

以上の復氏の原則に対し、「自分は結婚してからの生活が随分長く、この名前が社会生活でも浸透してしまっているから、引き続きこの名前を名乗り続けたい」という人もいるでしょう。

民法はその様な方の希望にも沿えるよう、同じく第767条2項にて、

「前項の規定により婚姻前の氏に復した夫又は妻は、離婚の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができる。」

と定めています。つまり、婚姻時の苗字を引き続き名乗れる、ということです。これを「婚氏続称」と呼んでいます。

この届出は、「離婚の日から3か月以内に届け出る」とされていますが、離婚届と同時にすることもできます。

婚氏続称のための届出方法

婚氏続称のための届出方法

既に述べているとおり、婚氏続称の届出は、離婚届と同時にすることもできますし、離婚により復氏して一旦婚姻前の戸籍に戻り、あるいは新たな戸籍を作ったという対応の後でも、期間内であればすることができます。

この婚氏続称をするにあたり、離婚した元配偶者に対し承諾を得る必要は全くありませんし、証人も不要ですから、ご自身だけで決めることができるというわけです。

届書は役所で取得することも可能ですし、インターネット上でも書式をダウンロードすることができるようになっています。離婚届と同時に提出する場合には、離婚届の方に婚氏続称する旨の記載をします。

届出地は、婚氏続称する届出人の本籍地のほか、所在地の市区町村でも可能ですが、本籍地以外の場合には戸籍の謄本を添付することになっています。

離婚した元配偶者との間に子がいた場合

離婚した元配偶者との間に子がいた場合

離婚の際にその相手との間に子がおり、さらにその子が未成年者だった場合、親権者を定めて離婚をしなければなりません。

離婚をして、戸籍を抜ける(従前の戸籍に戻る あるいは 新戸籍を編成する)側が子の親権者になることになっても、その子は当然に自分と同じ戸籍に入籍するわけではありません。

子を親権者の戸籍に入れる手続

子を親権者の戸籍に入れる手続

子が、その親権者の戸籍に入籍するためには、家庭裁判所で、子の氏を離婚後の親権者の氏に変更する許可の審判(子の氏の変更許可)を得る必要があります。

なお、この審判の申立は、子が15歳以上になっている場合には、子自身が手続の申立人となります。逆に、15歳未満の子の場合は、その法定代理人、つまり親権者が子本人に代わって申立てをしなければなりません。

子の氏の変更許可の申立ては、子の住所地の家庭裁判所に対して行います。

家庭裁判所の許可審判が出たら、その審判に基づいて役所で入籍の届出をし、その受理によって親権者と同じ苗字を名乗れることになるのです。

親権者は復氏したが、子は婚氏を名乗りたいと求めた場合

親権者は復氏したが、子は婚氏を名乗りたいと求めた場合

先ほど述べたとおり、離婚の日から3か月以内であれば、離婚により一旦復氏したとしても、婚氏続称の届出をすることができます。

その婚氏続称の届出を親権者にて行い、その変更後に子の氏を親権者の氏に変更する家庭裁判所の許可を得て子を自身の戸籍に入籍届出すれば、非親権者の戸籍から子を親権者の戸籍に移したうえで、苗字は婚氏続称した親権者と同じ、つまり子にとってはこれまでと同じ苗字を名乗ることができるようになります。

婚氏続称をする場合のリスク

婚氏続称をする場合のリスク

離婚時に婚氏続称することにしたが、やはり婚姻前の氏(いわゆる旧姓)に戻りたい、ということもあるかもしれません。

その場合は、「届出をすれば旧姓に戻れる」というものではなく、戸籍法上の規定により、家庭裁判所の許可を得なければならず、「やむを得ない事由」が必要となります。

苗字(氏)というのは個人の特定のために重要なものであり、安易に変更することは社会的な混乱を生んでしまいます。そこで、「正当な事由」よりもより厳格な「やむを得ない事由」が必要であるとされているのです。

家庭裁判所においてこの「やむを得ない事由」を認めて許可を出している例もありますが、申し立てれば必ず許可されるというものではないというリスクは承知しておかなければなりません。

また、仮に離婚して婚氏続称を選択した後、また再婚をして離婚した場合、復氏するとしても、その復氏というのはいわゆる「旧姓」ではなく、婚氏続称した苗字、つまり再婚の前の婚姻についての元配偶者の苗字になります。旧姓に戻したい場合には、やはり上記の家庭裁判所の許可が必要となってしまいます。

離婚時の婚氏続称については、将来的にいわゆる「旧姓」に戻したいということにならないか、可能性とリスクを考慮して選択すべきといえるかもしれません。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 相川 一ゑ
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