離婚した方が良い夫婦と法律上の離婚事由との関係

配偶者と離婚したい理由は様々です。問題は、その理由であれば離婚した方が良い/しない方が良い場合のではないか、その理由をもって法律上離婚できるか、と言った点です。以下、これらについて紹介していきます。

離婚したいと相談にいらっしゃる方々の離婚理由

離婚したいと相談にいらっしゃる方々の離婚理由

相談時によくある理由としては下記のようなものが挙げられます。

  • 夫/妻の不倫
  • 自分自身に恋人がいる
  • 相手の暴力
  • 精神的虐待(モラルハラスメント)
  • 夫/妻の病気
  • 夫/妻の浪費
  • 夫/妻の借金
  • 生活費を渡してくれない
  • 義両親との不仲
  • 相手から離婚を求められている
  • 夫/妻が出て行ってしまい別居している
  • 性的不調和(セックスレス・無理矢理求めてくる)
  • 性格の不一致

これらは、どれか一つではなく、複数当てはまる場合が多いです。

民法上の離婚事由

民法上の離婚事由

民法では、離婚事由が法定されています。

民法第770条

夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

なお、「四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。」との条文がありましたが、令和6年5月21日公布・2年以内施行の民法改正により削除されました。

離婚したい理由と、民法上の離婚事由

離婚したい理由と、民法上の離婚事由

よくある離婚したい理由として挙げられるもののうち、法律上正面から規定されているのは、民法第770条第1項1号に定める、夫/妻の不倫のみです。

そのため、多くの離婚事件で問題になるのは、民法第770条1項4号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」の該当性です。モラルハラスメントも、この条項に該当するといえるのかが問題になります。

「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」との表現は、非常にあいまいな表現で、どのようなものがこれに該当するのか、文言上明らかではありません。実務上、この条項に該当するかどうかは、「本号による離婚請求があると、婚姻の継続が不可能となっているかどうか(婚姻がすでに破綻しているかどうか)が決定的な意味を持つことになるから、通説は、より端的に『婚姻関係が破綻し、回復の見込みがない状態』とする」とされています(二宮周平編著『新注釈民法(17)親族⑴』(有斐閣、2017)。

最も多い離婚したい理由:精神的虐待(モラルハラスメント)

モラルハラスメントの「婚姻を継続し難い重大な事由」該当性

モラルハラスメントの「婚姻を継続し難い重大な事由」該当性

モラルハラスメントは、基本的には精神的な攻撃であるため、客観的証拠を揃えることが厳しいことが往々にしてあります。日々、夫/妻から罵声を浴びており、それを録音したデータがあれば良いのですが、なかなか現実的ではないと思われます。

もっとも、モラルハラスメント夫/妻は、自身が悪いことをしている自覚がない場合が多いです。そのため、無自覚に、モラルハラスメントを裏付ける言動をする・ぼろが出ます。

そこで、代理人弁護士を通じた離婚協議での手紙、調停期日での言動・書面、(特に夫に代理人弁護士が就かない場合)離婚訴訟での答弁書や準備書面等、夫自身の行動を利用して、モラハラ気質の表れた事実を顕在化させることで、裁判所に「モラハラ配偶者との婚姻関係は破綻している」との心証を抱いてもらうことが考えられます。

モラハラ夫/妻との離婚を認めた裁判例

モラハラ夫/妻との離婚を認めた裁判例

モラハラ夫の典型的な言動を基にして、妻からの離婚請求を認めた裁判例があります。

東京高等裁判所平成29年6月28日判決

まずは、以下のとおり、モラハラ夫の敵対行為を認定しています。判決原文では「控訴人」「被控訴人」と記載している箇所を分かりやすく「妻」「夫」と読み替えます。

「妻は,平成16年3月流産した。妻は,流産後,子供を見ると,おなかの中の子を無事出産してやれなかった罪悪感と悲しみに襲われたが,その思いを夫とは共有できず,妻は孤独感をもった。」

「妻は,平成17年9月頃,長女を妊娠し,平成18年○月○○日,長女を出産した。妻は妊娠中悪阻がひどく苦しんだが,夫には妻の苦しみが伝わらず,妻が夫に背中をさすって欲しいと頼んでも夫はこれに応えず,妻は夫から無視されたように感じたことがあった。」

「夫は仕事が多忙で,長女の育児にはおむつ換え程度しか関与できなかったが,妻が夫に育児の辛さを訴えると,夫は,「お前は子供の面倒を見ているだけだろ。家のことだけだろ。」と言って,育児の辛さに対する理解を示さず,妻は疎外感を持った。」

「妻は,平成20年○月○○日,長男を出産した。妻は,長男の妊娠中,長女の世話もしながら,悪阻に苦しんでいたが,夫は家事の手伝いを増やすことや,妻をねぎらうこともなかった。長男が出生後,妻が長女を寝かしつけているのに,夫が大きな音でテレビを視聴していることがあり,夫に苦情を述べたが,夫はこれを改めないということがあった。」

「家計をめぐって,妻と夫が口論になった際に,夫は妻に対して,「お前に稼げるのか。稼いでもいないくせに。どうせできないだろう。俺は平均以上稼いでいるんだ。」と述べ,専業主婦をしている妻の心情を逆なでした。」

「妻は,平成22年9月,再び妊娠したが,まもなく流産した。妻が夫に対して,妊娠したことを伝えても労いの言葉がかけられることはなかった。妻は,流産したことに自己嫌悪を覚え,家に閉じ籠もっていると精神に変調を来しそうであると思い,気を紛らわせるために就職したいと夫に伝えると,夫は,「仕事に行くのであれば,家のことも,もちろんちゃんとやるのだろうな。」と応えた。妻は,夫のかかる言葉を聞き,怒りすら湧かず,孤独と悲しみを強く感じた。」

「妻は,自分で安定的に収入を得たいと考えて,平成24年4月,看護学校に入学した。入学後,テストや課題作成のため,妻が夫に対して,一時的に家事の負担を求めても,夫は,結婚する際に家事は一切しないと言ってある,家事は一切しないなどと述べて,家事の分担を拒否した。夫は,妻が外出する際にスカートを着用しているのを見て,妻に男ができたのではないかと疑う姿勢を示したりもした。夫は,妻の作る食事に対する不満をカレンダーに書き込むようになった。」

「夫の休日に妻が看護学校に通学すると,夫が未成年者らを妻不在中にきつく叱り,妻が帰宅すると未成年者らが泣きながら妻のもとに駆け寄ってくるという出来事が続いた。妻が,未成年者らを按じて,夫に対して,夫の休日には外出してはどうかと話すと,夫は,「遊びに行けというなら行ってやる。しかし,来月から生活費を減らすからな。その分はお前がなんとかしろ。」と応えた。」

裁判所は、このような事実認定をした上で、以下のとおり判示し、離婚請求には理由があると認めました。

「被控訴人は,事柄の背景を考えれば夫婦喧嘩にすぎないもので,離婚原因は存在しないと主張するが,前記のとおり,夫婦の役割等に関する見解の相違を克服できないまま,控訴人は離婚意思を強固にしており,その意思に翻意の可能性を見いだしがたい上に,既に述べたとおり,別居後は,双方に,今日に至るまで,復縁に向けての具体的な動きを見い出すことができないのであるから,かかる事情に照らせば,既に夫婦喧嘩という範疇に留まるものではなく,離婚原因を形成するものといえ,被控訴人の主張は採用することができない。

被控訴人は,控訴人が最初の流産をした際には控訴人に寄り添おうとしたとか,家事や育児についても,被控訴人としては,仕事との兼ね合いはあるができる限りの協力をしたつもりであるなどと主張するところ,本件においては,被控訴人の主張を裏付けるに足りる証拠はないし,その点を措くとしても,そもそも,被控訴人の主張自体,被控訴人としては自らができると考えた範囲のことを自らの判断で行ったと主張するものにとどまり,被控訴人が控訴人とコミュニケーションをとり,その心情を理解しようと努めたと主張するものではない。被控訴人自身,原審における本人尋問において,夫婦が対等なパートナーという関係ではなかったと述べ,控訴人から育児の窮状を訴えられた際には,控訴人が家事しかやってないじゃないかと述べた旨自認しているほか,控訴人の心情への配慮という点についても,控訴人の実家が自宅のすぐ近くにあることから,被控訴人はこれといったことはしていないと認めている。

以上によれば,控訴人と被控訴人の婚姻関係は既に修復不能なまでに破綻しているものと言わざるを得ない。控訴人の離婚請求は理由がある。」

離婚した方が良いかどうか

離婚した方が良いかどうか

上記のとおり、離婚が認められるかどうかは、法律上問題があります。

とはいえ、離婚した方が良いかどうかは、全てはあなた次第です。今後の人生をやり直したい・離婚「しなかった」ことを理由に人生を後悔したくないのであれば、それを理由にして離婚した方が良いのです。

あとは、弁護士がどうやって法律上離婚ができるようにするのか、サポートしていきます。

ご相談 ご質問 グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、17名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 平栗 丈嗣
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