扶養的財産分与とは、離婚後に元配偶者となる相手方に対し、その生計の維持を目的として支払う財産分与のことです。
そもそも離婚すれば扶養義務もなくなるはずですので、扶養的財産分与ということ自体が矛盾しているような気もしますが、ごく例外的な事例において、裁判所でも認められているケースがあります。
既に述べているとおり、離婚後は法的には赤の他人となる元夫婦間で扶養義務を互いに負うことはありえないようにも思われますが、名古屋高等裁判所の決定において「婚姻解消に当たって、将来の生活に不安があり、困窮する恐れのある配偶者に対し、その社会経済的な自立等に配慮して、資産を有する他方配偶者が、生計の維持のための一定の援助ないし扶養をすべき」とした事例があります。
つまり、元配偶者の生計の維持の難易や、一方配偶者の有り余るほどの扶養能力によっては、例外的にこのような扶養的財産分与という義務が認められることもあるということです。
あくまでも例外的なケースではありますが、清算的財産分与(夫婦間の財産を公平に分配せよという財産分与)という一般的な財産分与だけではなく、このような財産分与の主張を、夫婦のうち収入が低い側の当事者がしてくる可能性はありえます。
扶養的財産分与の成否を検討する際の考慮要素として、義務者(請求を受ける側)の経済的な状況や離婚に至った有責性、権利者(請求する側)の経済的な事情や将来の稼働能力等の要素があるということは、知っておいた方が良いと思われます。