子供のいる夫婦が離婚した場合、養育費という問題は切っても切り離せません。
さらに、昨今、子供が私立高校・大学に進学する人数が増えている中で、子供の学費を相手方に請求することができるのかお悩みの方は多いと思います。
このページは、そのようなお悩みをお持ちの方に、専門家が養育費の仕組み等について説明しております。素朴な疑問をお持ちの方はぜひ読んでみてください。
そもそも、養育費とは?
養育費とは、子どもを監護・教育するために必要な費用のことをいい、
主に、未成熟子(経済的・社会的に自立していない子)が自立するまでにかかる生活に必要な経費や教育費(習い事の費用も含む)、医療費などが含まれます。
養育費の額については、養育費算定表をもとに決められるのが一般的です。
なお、教育費について平均的な公立高校までの学費と平均的な諸経費のみを含めた費用を元に算出されております。
上記算定表は、以下の要素を総合的に考慮して養育費の額が決められております。
1 子供の年齢・人数
2 両親の年収・職業形態(給与所得者か自営業か)
特別費用とは?
先ほど説明した養育費算定表には、以下の費用については含まれていないとされています。
1 私立高校や大学進学時に要する入学費・学用品費
2 病気や怪我による高額な医療費
このような一時的に大きな支出を伴う子どもの費用を「特別費用」といい、当然に支払い義務があるとは言い切れません。
もっとも、子供の親権者となる者が相手方に上記の特別費用を請求することが全くできないということではございません。
当事者が協議(又は調停)によって、特別費用についての条項を定めることについての合意をした場合には、親権者は特別費用を受け取ることが可能です。
もっとも、親権者が特別費用を支払ってほしいと求めているにもかかわらず、相手方が上記要求に応じないパターンが多々あると思われます。
そのような場合、親権者は、養育費の増額を求める審判の申立てをするといった方法があります。
以下では、実際に養育費の増額請求をした裁判例を紹介していきます。
裁判例解説
1 支払義務者である元夫に、子供の国立大学の学費・通学費の一部を負担すべきであると判断した事案(平成27年4月22日 大阪高裁)
事案の概要
元妻が、長女が四年制の私立大学に通っており、学費・交通費相当額も養育費に含まれることを理由に、元夫に対し、子供2人の養育費(2人で合計月10万円)の支払いを求めました。
裁判所の判断
子が私立学校又は大学に在籍する場合で、義務者が当該私立学校又は大学への進学を承諾している場合や、その収入及び資産の状況等からみて義務者にこれを負担させることが相当と認められる場合には、公立学校の学校教育費平均額を超える学校教育費を、誰がどの程度負担するものとして養育費を算定するかが問題となると判断したうえで、
本件の場合、
(1) 夫婦は婚姻中に長女の進学する高校を検討した際、国立大学の進学を視野に入れて進学先を選択した
(2) その際、国立大学の進学を視野に入れて高等学校を選択する旨の話は元夫も聞いて
いた
ことから、元夫は、長女が国立大学に進学した場合の学費標準額と通学費に相当する金額の一部を負担するのが相当であると判断しました。
その上で、元妻及び元夫の収入や生活状況などからすると、仮に両者が離婚しなかったとしても双方の収入で長女の学費等の全額を賄うのは困難であり長女自身においても奨学金を受けあるいはアルバイトをするなどして学費等の一部を負担せざるを得なかったであることが推認されるとして、元夫の負担割合は3分の1であると判断しました。
2 養育費の支払い期間について、「子が成人に達する日まで、1人あたり月額5万円」から「子が成人に達する日の属する月までから22歳に達した後の最初の3月まで」に延長された事案 (平成29年11月9日 東京高裁)
事案の概要
元妻が、2014年9月頃に、子供が私立大の付属高校に進学したことを理由に、元夫に対して、養育費の増額を求めて、調停及び審判申立てをし、「2014年9月から子らがそれぞれ成人に達する日の属する月まで、1人当たり毎月5万5千円ずつを支払うこと」が確定されました。
これに対して、元妻が、上記審判について不服があるとして、即時抗告をしました。
裁判所の判断
裁判所は、大学の学費の支払い義務については、大学進学了解の有無、支払義務者の地位、学歴、収入等を考慮して負担義務の存否といった事情を考慮して判断されるべきとした上で、
(1) 元夫が、子供が私立高校に進学することに反対し、私立大学進学も了解していなかった
(2) 元妻の収入はわずかで、元夫には扶養すべき子が多数いるという中で、私立大学に進学した子供に対して奨学金やアルバイト収入で教育費の不足分を補うように求めることは不当ではない
(3) 前件審判時以降父と父の収入はほとんど変化がない
などを理由に、元夫に対し、子供の大学費用についての支払義務はないと判断しました。
他方で、成人であっても大学生である以上、自立して生活できるほどの収入を得ていないことから未成熟子といえること等を理由に、通常の養育費について支払期間の延長が認められました。
まとめ
上記裁判例を見ると、
②支払義務者に学費を負担するほどの経済的余裕があるか否か
もっとも、事案によって、様々な個別的事情があり、主張や立証次第で異なる結論が出ることがありますので、ご理解ください。
グリーンリーフ法律事務所は、地元埼玉で30年以上の実績があり、各分野について専門チームを設けています。ご依頼を受けた場合、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。