紛争の内容
アメリカ人女性Bと婚姻していた日本人男性のAさんは、Bとの結婚を機に、アメリカでB及びBの家族と同居することとなりました。しかし、アメリカでの生活の中でB本人やBの家族からしつような嫌がらせを受け、体調を崩し、やむなく日本に帰国しました。Bからは、AさんやAさんの親、兄弟に対し、「Aは頭がおかしい」などといった嫌がらせのメールなどが届き、Aさんは警察に相談するなどするまでになりました。AさんはBと離婚をしたいと考えましたが、Aさんからの連絡に対して、Bは一切無視し、離婚の要求に応じてくれませんでした。そこでやむなく弁護士を立てることとしたのです。
交渉・調停・訴訟などの経過
Aさんの代理人として弁護士からの離婚を求める通知を出すも、Bは一切無視をし、連絡は一切取れない状態が続きました。やむなく裁判離婚の検討をするものの、日本の法律上は裁判で離婚をする際、その管轄は原則として相手方の住所地となりますので、本件ではアメリカでの裁判が必要と考えられました。しかし、この点は判例などでも、当事者間の公平などを考慮し、例外的に原告の住所地に管轄を認めるものがありました。Aさんは、B本人やBの家族から嫌がらせを受け、警察にまで相談する状態でしたし、日本語も堪能であって、ビザの関係からもAさんは容易にアメリカにはいけない状態にありましたので、この点を裁判所に訴えかけ、本件でも例外的に日本に裁判管轄を認めるべき事由があるとの主張をいたしました。
本事例の結末
結果として、裁判所はAさんがBらから受けていた嫌がらせなど、こちらの主張を総合考慮し、日本に裁判管轄があることを認めてくれ、またAさんの主張する事情についてAB間の夫婦関係を破綻させるに足る事由があるものとして、離婚請求についても認めてくれました。
本事例に学ぶこと
渉外離婚は、日本に裁判管轄が認められるか、準拠法は日本の法律とできるか、送達はどのようにやるか、といった特殊な問題が多くあり、当事者からの聴き取りを実施し、裁判例等も踏まえ、丁寧な主張をする必要があると感じました。