学資保険だけが財産分与の対象である場合に、親権者側に当該保険をそのまま引き継いで離婚を成立させたケース

■紛争の内容
夫(50代自営業) 妻(40代正社員) 子2人(15歳、13歳)
結婚直後から夫が転職を繰り返し、その収入が安定しなかったため、妻が正社員の給与で家計を支えてきた。しかし、最近になって、夫は妻に相談することなくまた仕事を辞め、収益の上がるかどうかも分からない個人事業を立ち上げることになった。我慢の限界に達した妻は、子2人を連れて別居を開始。離婚を求めて弁護士に依頼した。
夫に財産はなく、夫婦共有財産と呼べるのは子供の学資保険(契約者は夫名義)のみであった。

■交渉・調停・訴訟などの経過
まず離婚調停を申し立てたが、夫は「子供達が離婚を望んでいない」という理由で離婚を拒否。
調査官による子の意向調査が行われ、そこでの結果は子供達も離婚に賛成しているというものであったが、最後まで夫が納得せず、調停は不調に終わった。
引き続き離婚の訴訟を提起したところ、夫はようやく離婚もやむなしの方向に考えを変え、離婚の諸条件につき話し合いを重ねた。

■本事例の結末
和解離婚成立
養育費月2万円(子1人あたり1万円ずつ)
子供の学資保険については解約せず、契約者を妻に変更して妻が引き継ぐ。
面会交流は当面の間メールのやり取りに限る。

■本事例に学ぶこと
正社員の妻の方が年収が高く、財産分与の対象となる夫名義の財産としては学資保険があるのみであった。本来であればこれも解約して双方2分の1ずつという分け方になるのだろうが、子供のための契約であることから、解約せずに妻が全てを引き取ることで合意できた。収入が不安定な夫からは低額な養育費しか期待できないので、その穴埋めという意味でも、このような合意ができてよかったと思う。