別居中の配偶者に子どもを連れて行かれてしまい、子どもを取り戻すまでに時間がかかったケース

■紛争の内容
配偶者の浮気及び不就労等から子どもを連れて家を出ることを決意し別居したものの、その直後に転居先が配偶者の知るところとなり、子どもから目を離したすきに配偶者が子どもを連れて行ってしまったというご相談でした。
お子さんを取りかえすことを最優先課題とし、並行して離婚手続を進めるという内容で代理人として受任いたしました。

■交渉・調停・訴訟などの経過
離婚、子の監護者の指定、子の引渡しの各調停を申し立てました。
その中で配偶者は親権を主張し、子どもの引渡しを拒んだため、いずれの調停もまとまらず、離婚調停は訴訟に、子の監護者の指定等の調停は審判に移行しました。
離婚訴訟が続く中、子の監護者の指定等について、配偶者に対して子どもの引渡しを命じる旨の審判が出されたのですが、配偶者はその判断に対して不服を申し立てました。
上級審において配偶者の申立ては退けられたのですが、配偶者は確定した審判に従いませんでした。
配偶者による任意の引渡しが期待できないため、審判に基づいて子の引渡しの強制執行を申し立てることにしました。

■本事例の結末
離婚訴訟については、配偶者が一審判決に不服を申し立てたため、高等裁判所において、こちらを親権者として離婚をする旨の和解が成立し終了となりました。
子の引き渡しについては、以前より執行力が弱まっている関係で強制執行自体は失敗に終わりましたが、その後、配偶者から任意の引渡しを受けたことでお子さんを取り戻すことができました。
結局、お子さんが連れて行かれてから戻ってくるまで15ヶ月程度かかってしまいました。

■本事例に学ぶこと
子どもを連れて行かれてしまった、取り戻したいという場合には、子の引渡しの手続を利用するということになりますが、一般的に、裁判所が判断を下すまではそれなりの時間がかかります(配偶者が裁判所の判断を争う場合にはより多くの時間がかかります)。
裁判所が子どもの引渡しを命じる判断を下した場合にも、配偶者がそれに従わない場合には強制執行手続を利用せざるを得ませんが、運用変更により強制力の弱まった強制執行手続ではお子さんを取り戻せる可能性は低いと考えた方がよいかもしれません。
以上のように事後的な救済が難しいということを前提にすれば、お子さんを連れて別居をする場合には、保育園等との連携により、お子さんを連れて行かせない体制を構築することが重要と思われます。