◆紛争の内容
依頼者である女性Aさんは、夫Bから「家を出ていけ」、「誰のおかげで生活できていると思ってるんだ」などといった暴言を日々受け、やむを得ず10年ほど前に子どもを連れて家を出、夫との別居を開始しました。別居の間、AさんはBに離婚を求める調停なども申し立てましたが、Bは子どもの親権を譲らず、離婚の話はまとまらないまま不調となってしまいました。その後別居開始から10年ほど経過し、子どもも高校卒業間近となったことから、再度AさんからBに対し離婚の請求をしたいと考えるようになりました。
◆交渉・調停・訴訟などの経過
AさんはBに対し、メール等で離婚の意思を示しましたが、Bは「子どもの親権は自分だ」などと譲らず、Aさんはやむなく弁護士を代理人として再度離婚調停を申し立てることにしました。
調停の中では、子どもの監護実績としてAさんが明らかに優れていること、子ども自身の意思も父であるBではなく、Aさんとの生活を続けることを希望していることが合理的に推測できること、Aさんは、親戚等にも子どもの監護の補助を頼めることなどから、調停委員もAさんを親権者とする提案に合理性があるとして、Bとの話を進めました。
◆本事例の結末
Bも、離婚をすること自体は争わなかったものの、Aさんを親権者とする場合には養育費等はあまり払えないとし、Aさんも早期解決できることも考慮して、養育費についてはこれまでもらっていた婚姻費用から推測される額よりも大幅に減額する形で離婚調停を成立させることとなりました。
◆本事例に学ぶこと
本件では、Aさんの「子どもの親権は譲れない」という強い希望から、多少養育費については譲歩した形でも良いということになり、Aさんの一番の望みは、わずか2回の調停で勝ち取ることができました。離婚訴訟となれば、双方の離婚原因や親権者としての適性などの主張・立証を経ることになるため、早期解決には不向きです。何を優先順位として挙げるか、他の条件については何処まで譲歩できるかを厳密に検討することで、早期の離婚成立も可能になると感じました。