◆紛争の内容
依頼者である女性Aさんは、浪費癖のある夫Bから生活費を十分に渡してもらえず「金がないならお前が借りればいい」などという借り入れの強要を繰り返し受け、耐えきれずに娘を連れて家を出ました。Bとは離婚を強く望んでいましたが、離婚を求めても「勝手に出て行った。離婚原因を作ったのはお前の方だ。」などといった回答しか返ってこず、そのまま4年の月日が経過していました。子どもも成人したことから、一つの区切りとして、再度AさんからBに対し離婚の請求をしたいと考えるようになりました。
◆交渉・調停・訴訟などの経過
Aさんは、これまでのBの態度から、このままでは協議離婚をすることは難しいだろうと考え、弁護士を代理人として離婚調停を申し立てることにしました。
調停の中では、Bも「勝手に出て行ったのだから、慰謝料200万円を払ってもらわなければ離婚しない。」などと述べて、当初は一切離婚に応じないという姿勢でした。
◆本事例の結末
離婚調停内では、Aさんがなぜ家を出たのか等の事情について調停委員を通じてBに伝え、AさんもBのため、そして生活費を捻出するために多額の借金を負ったことを指摘しました。Bはこのままでは離婚訴訟になり、その中では別居に至った経緯や、別居期間を考慮すれば敗訴の可能性が高いと見たのか、「Aさんが同居中に負った借金につきBに求償しない」ということを条件に、離婚に同意するようになり、離婚調停を成立させることとなりました。
◆本事例に学ぶこと
本件では、BのAさんに対する態度は経済的DVやモラハラ等といえるもので、立証は難しいものでしたが、Aさんの主張を時系列にまとめ、調停委員にも分かってもらえるように説明をしたことで、Bへの説得もはかどったように思います。また、いずれにしても無資力のBに求償して借金を返してもらうことは困難と思われましたので、回収見込みのない債権を放棄したという点も実質的な損失無くして離婚の条件とできたと評価できると思います。優先順位を検討し、損得を踏まえて何処まで譲歩できるかを厳密に検討することで、早期の離婚成立も可能になると感じました。