◆事案の概要(紛争の内容)
自営業をしていた40代女性のAさんは、50代の夫Bが不貞に及んでいることを知り、さらにBが不貞相手Cに女の子を産ませていることを知りました。しかし、Bに預貯金等はなく、不動産を持っているだけでしたので、Aさんは当該不動産と年金分割だけでも請求したいとして、離婚調停を申し立てることとなりました。
◆交渉・調停・訴訟などの経過
調停では、夫Bは唯一の財産である不動産の財産分与及び年金の分割についてはそれがなくては今後C及びその子との生活が成り立たないとして、これを拒否しました。しかし、夫Bが有責配偶者であることは明らかですから、この点を指摘して調停でも譲歩を求めました。
◆本事例の結末
結局、夫Bは訴訟になれば自身に慰謝料支払い義務が生じるであろうことを理解し、Aさんとの婚姻関係が解消されないことを重視し、唯一の財産である不動産を全てAさんに譲り、年金分割も応じることとなりました。Aさんは、Bに対し、金銭は請求できなかったものの、不動産及び年金を得ることで、今後も安定した生活を送ることが見込めることになりました。
◆本事例に学ぶこと
有責配偶者に対し慰謝料を請求しようとしても、実際には配偶者に資力がないこともあります。その場合に、金銭ではなく、財産分与の対象となる不動産の分け方について譲歩を引き出すという方法もあると感じました。