紛争の内容
会社員として勤務しているAさんは、平成20年に同じく会社員の夫Bと婚姻し、長女C、二女Dをもうけ、Bとペアローンを組んで購入したマンションに暮らしていました。
長女Cは、なかなか学校になじめない特性があったため、AさんはCのケアを慎重にしながら育児でも家事でも中心的な役割を担っていましたが、夫BはCの内向的な性格等を責め、しつけと称して事あるごとに「何でそんなこともできないんだ」「お前なんて俺の子ではない」などと暴言を吐きました。
AさんはそのたびにCを庇うなどしましたが、そうするとさらにBは激高し、Aさんに対しても「お前なんて生きている意味はない」「俺がいないと生活できないくせに」などと詰る状態でした。
二女Dも、CやAさんに対するBの態度を見て怯えるようになってしまい、Bの大声での罵声などは近所から警察に通報があるほどでしたので、Aさんは警察に相談し、警察からのアドバイスを受けて子どもたちを連れてBと別居をする決意をしました。
Aさんとの別居が始まると、Bは途端に態度を変え、「戻ってきて欲しい」「子どもに会わせて欲しい」などと求めるようになりましたが、CやDの父親に対する恐怖は変わらず、また別居に至る前にも夫婦間で話し合っても何も解決できなかった経緯があったため、Aさんは弁護士に依頼してBとの離婚手続を進めることにしました。

交渉・調停・訴訟などの経過
Aさんは、Bがこれまでも主張をコロコロ変え、自身の非を認めなかったことなどから、協議離婚ではなく調停離婚を望み、早急に離婚調停と婚姻費用分担請求調停を起こすことにしました。
Bは調停の中でも復縁を求めてきたものの、婚姻費用は標準算定方式(裁判所基準)に従い決めることを承諾しました。

本事例の結末
結局、Aさんの離婚の決意は固く、別居の経緯として警察介入があるほどBからの家族への言動には問題があったということを前提に、Bも離婚に応じることとなりました。
幸いにも、ABがペアローンを組んでいたマンションは、残ローンよりも高額で売却できることになり、その売却益もAB間の出資額・返済の貢献度に応じて案分することで決着がつきました。
Bは離婚後の面会交流も求めていましたが、CのBに対する拒否感が強かったため、面会交流は電話による間接的な連絡と、写真や成績表を送るという形での成長報告という方法に留めることになりました。

本事例に学ぶこと
モラハラ・暴言といった離婚原因は、なかなか証拠を集めることが困難ですが、第三者への相談や通報、またメールやLINEなどの加害者とのやりとりを残しておくことで、客観的な証拠とできる場合があると感じました。
また、離婚原因に親子の問題がある場合には、たとえ別居親・非親権者が面会交流を求めても安易に応じるべきではなく、事情を踏まえてその可否そのものや方法を工夫すべきと感じました。

弁護士 相川一ゑ