紛争の内容
Aさんは、10年前に夫Bと婚姻し、息子Cを設けました。
夫Bは、息子Cを可愛がってはいたものの、Aさんに対しては気に入らないことがあるとすぐに怒鳴り、物に当たるなどの暴力を振るいました。
あるとき、夫Bの暴力に耐えかねたAさんは、警察を呼び、臨場した警察官にも話を聞いてもらって、夫Bに出て行ってもらう形で別居を開始することになりました。
夫Bは別居には応じたものの、息子Cと会わせるようしつこくAさんに求めてきていました。
夫Bとの交渉を直接応じられる状況になかったAさんは、弁護士に依頼して、交渉をしてもらうことにしました。

交渉・調停・訴訟等の経過
まずは弁護士から夫Bに連絡をしましたが、弁護士が就いたということで夫B側も弁護士を立て、弁護士両名で離婚条件や子との交流について話し合いをすることにしました。Aさんとしては、息子Cが夫婦喧嘩を目の当たりにし、警察介入の場にもいたことから、Bを怖がっているということを伝えましたが納得せず、結局離婚と面会交流を求める調停が申し立てられました。

本事例の結末
調停の中では、息子Cが実際にどのように夫婦喧嘩を目の当たりにした影響が出ているかなどを、丁寧に説明し、結局息子Cの心がほぐれるまでは直接的な面会交流は出来ず、AさんからBに対して成績表を送ったり、写真を送ったりするということで納得をしてもらいました。
これを直接対面して交流をはかる「直接的な面会交流」に対して「間接的な面会交流」と呼びますが、具体的な交流方法も調停の中で定め、事件は終了しました。

本事例に学ぶこと
夫婦喧嘩を子が目撃することは、「面前DV」などと呼ばれ、子に対する精神的な虐待と理解されています。 そのような事情により、直接的な面会交流はできない別居親と子もいるかもしれませんが、子の成長を知ることは、別居親に親としての自覚を持ってもらうことにもなり、双方親の協力と理解が得られ、子の福祉にとってマイナスにならないのであれば、中間的な解決策として、検討しても良いのではないかと感じました。

弁護士 相川 一ゑ