紛争の内容
ご夫婦は、夫は外国籍(永住者)、妻は日本人、日本で結婚し、夫婦で住宅ローンを組み、住宅を共有していました。

成人した子もおりましたが、夫と子の仲が悪く、妻と夫の仲もここ数年は悪い状況が続いていました。

夫は、時にDVや暴言を吐くこともあり、妻子と衝突することもありました。

それどころか、家出することも多くなり、怪しんだ妻が探偵に依頼し調査をしたところ、人目をはばからず女性とデートしている様子が明らかになりました。

問い詰めると、夫が逆上し、手をあげてトラブルとなり、それを機に別居を開始したため、離婚を進めることになりました。

交渉・調停・訴訟等の経過
当初は、離婚調停により解決を図ろうと試みましたが、夫は不貞やDVを認めず、住宅ローンのついている不動産についても譲らないとの態度を貫いたため、裁判で決着をみようと考え、早々に調停を打切りました。

すぐに訴訟を提起し、慰謝料等を求めました。

なお、国際離婚では、訴状において、裁判管轄を説明しなければならないという特徴がありました。

何度か主張反論が繰り返されたところ、裁判所の心証としては、不貞行為が推認され慰謝料を支払うべきであるとの判断となりました。

他方で、財産分与については、現状、妻子が共有名義の住宅に居住していること、妻が夫の住宅ローン借り換え審査に通る可能性が高いことなどから、妻が住宅ローンの支払を引き受ける一方で、夫の持分を妻に分与することを提案しました。

本事例の結末
裁判所の提案した和解案は妥当なものであり、当事者双方が合意したため、判決に至ることなく、和解により離婚を成立させることができました。

和解のため、財産分与についても柔軟な解決となりました。

本事例に学ぶこと
住宅ローンが残っており、夫婦がペアローンを組んでいる場合、不動産所有権もそれぞれ持分を有することが多いです。

この場合、財産分与では、銀行という第三者が存在するため、判決において、迂闊に分与に立ち入れないということが現実問題として発生します。

もちろん、いくつかの裁判例があり、柔軟な解決を図る余地がありますが、まだ上級審で考え方が確定していないともいえ、裁判官もどのような判決を書くか躊躇することがあります。

そこで、このような場合に、臨機応変に対応するためには、調停や裁判上の和解により合意するのがもっとも柔軟性のある解決をすることができます。

本件では、妻が家を単独で所有したい一方、妻の収入が安定していたため、夫名義の住宅ローンを引き取ってもよいと考えており、実際に金融機関も承認していたという事情があり、裁判所側から、原告妻の意に沿った提案をしていただくことができました。

住宅ローンがある不動産につき、離婚の財産分与においてどのように権利を獲得するかについては、事情に応じて綿密に検討する必要があります。そうしないと、杓子定規の解決となり、後に共有者物分割請求などの争いが残されてしまうことにもなりかねません。

不動産の財産分与でお悩みの方、配偶者のDVや不貞にお悩みの方、国際離婚でお悩みの方は、お気軽にグリーンリーフ法律事務所までご相談ください。

弁護士 時田 剛志