紛争の内容

Aさんは結婚当初より、夫Bさんから暴言や暴力を受けていました。

しかしながら専業主婦だったAさんは、幼い子どもの生活を守るため、別居をせずにこれらに耐え忍んでいました。

あるとき突然、Bさんが家を出て行ってしまったことから、Aさんは離婚を考えはじめました。Aさんはご自身でBさんと協議することは難しいと感じたため、弊所にご相談、ご依頼されました。

交渉・調停・訴訟等の経過

本件では離婚調停とともに、Aさんとお子さんの生活費のために婚姻費用分担調停も併せて申し立てました。

婚姻費用分担調停・審判では、その計算について争いがあり結論が出るまで長期化してしまいましたが、受任当初より粘り強く交渉し、事件係属中に(結論が出る以前に)婚姻費用の仮払いを受けられるようにしたため、早期に生活の立て直しを図ることができました。

離婚調停・訴訟の方は、Aさん側からはBさんに暴言・暴力といった離婚原因があると主張しましたが、逆にBさん側からはAさんが他の男性と不貞をしていたなどと事実と異なる主張をして離婚原因を争いました。また、財産分与の内容でもBさんは自分名義の自動車があることや、退職金があることを明らかにせず、意見が対立してしまったため、調停手続は不調に終わり、離婚訴訟へと発展しました。

双方が主張や証拠を出し尽くし、本人に対する尋問まで行って、ようやく離婚訴訟の判決が出されました。判決内容としては、離婚原因としては証拠もなく不貞を主張していたBさんの意見は一蹴され、おおよそAさん側の主張が認められており、Aさんにやや有利な条件での離婚とされていました。

しかしながら、その判決内容に納得いかないとして、Bさん側が控訴をいたしました。

そのため、離婚についてはさらに高等裁判所で争われることになりました。

本事例の結末

控訴審では、双方ともに新たな事実の主張はありませんでした。

そこで高裁の裁判官からは和解の提案がありました。

和解案の内容としては、これもおおよそ一審である家庭裁判所での判決内容と同様であり、Bさん側に金銭の支払い名目を変更するなど原審よりも少しだけ経済的メリットが生じる内容でした。

結局、Aさんは、更にBさんと長時間争うことと、原審から不利になった部分を比較し、この和解案を飲むことにして、裁判上の和解により離婚が成立しました。

本事例に学ぶこと

本件は、ご相談から離婚成立まで、実に4年以上の歳月がかかった長期の事件でした。争点が多く、その対立も深いことから、時間がかかってしまったこと自体は致し方無かったものと思います。

あとから振り返ってみれば、本件で最も良かったことは、婚姻費用について、調停を申し立てるだけではなく、交渉によって早期に仮払いをしてもらえるようになったことだと考えられます。

この婚姻費用の仮払いがあったからこそ、Aさんとそのお子さんの最低限の生活を守りながら、じっくりと事件に対応できたものと思います。

早く離婚したいと思っていても、双方の対応によっては、離婚調停や離婚訴訟が長期化するということもあり得ることです。

そのような場合には、どのように事件全体を進めて行くかという大局的かつ専門的な知見が必要になります。

本件はまさに、弁護士がいるからこそ、最後まで戦い抜くことができた事件だったのではないかと思います。

弁護士 相川 一ゑ
弁護士 木村 綾菜