紛争の内容 
パートタイマーのAさんは、結婚してから30年の夫B(大手会社の会社員)がいましたが、その夫Bは10年前に不貞をしていたことが発覚し、以降家を一方的に出て行ってしまい、別居状態となっておりました。AさんとBとの間には、子どもが一人おりましたが、その子どもが別居後に高校を卒業したことをきっかけに、それまでBが払ってくれていた月額20万円の婚姻費用が、一切支払われなくなってしまったのです。子どもは高校卒業後、大学に進学しており、パートタイマーAさんは、自分でライフラインや子どもの学費を払っておりましたが、Bからの婚姻費用がなくなったことで、自分のパートの給与だけでは生活が成り立たなくなってしまったことから、借金をしなければならないほどでした。そこで、やむなく弁護士に相談して、夫Bに婚姻費用を支払うよう求めることにしました。

交渉・調停・訴訟などの経過 
弁護士から夫Bに通知を出したところ、夫Bにはすぐに弁護士に依頼し、弁護士同士で交渉することとなりました。しかし、その交渉内では話がまとまらず、婚姻費用分担調停を申立て、その中で話し合いをすることとなりました。調停内での争点は、コロナ禍により、夫Bのボーナスがなくなってしまい、収入が激減したことをどう見るか、大学に進学した子どもの学費をなおBが負担せねばならないか、という点にありました。

本事例の結末
調停内で、こちらからも夫Bの収入からボーナスがなくなった合理性や、子どもが進学することについては、両親であるABの最終学歴がいずれも大卒であったことなどからも当然のこととして、協議が進められることとなりました。夫Bの収入が下がったことは影響するものの、その分子どもの学費なども考慮し、従前と同様20万円の婚姻費用をBから払ってもらえることになりました。

本事例に学ぶこと
婚姻費用の不払いは、日々の生活に直結する物であり、もしそのような事態が生じた場合には、裁判所でなるべく早く解決し、未払いについても認定してもらえるよう、未払い発生直後に弁護士に相談、調停を申し立てることが必要だと痛感しました。

弁護士 相川一ゑ