紛争の内容
数年前に夫が自宅を出て行ったという方から、依頼を受けました。離婚をすること自体に争いはありませんでしたので、住宅、保険、預金の財産分与が問題となりました。
交渉・調停・訴訟などの経過
住宅は売却し、その売却金を、夫婦それぞれがいくら取得すべきかが問題となりました。夫は、早期退職金を利用して多額の住宅ローンの返済をしており、早期退職金は夫の特有財産であるため、ローン返済額の全額を売却金から取得したいと希望しました。もっとも、私どもは早期退職金もまた、夫婦の財産分与の対象となるべきはずであるという主張をして、夫側の主張を了承せず、夫側が返済金額のうちの一部を取得することしか認めないと回答しました。
本事例の結末
私どもは、夫が早期退職金の受給資格を得るためには一定の勤務年数を勤務する必要があること、及び、その様な年数を夫が勤務できたことについて依頼者の方の貢献があったことを主張して、早期退職金を財産分与の対象とすべきであることを主張していましたが、私どもの主張が一部認められ、住宅以外の保険、預金についても財産分与を受けることにより、当方依頼者が約2300万円を獲得する調停が成立しました。
本事例に学ぶこと
早期退職金が財産分与の対象になるか否かは、退職金の性質によって左右されますので、事件によってどのような性質のものであるのかを検討する必要があります。この点、早期退職金の受け取りのために一定の勤務年数が必要になる場合等は早期退職金が財産分与の対象となることを主張することを検討した方が良いと考えます。反対に、会社の事業の整理のために、全社員を対象に早期退職を募集するというような場合は、早期退職金を財産分与の対象とすることは難しいかもしれません。このように、早期退職金の性質を考慮して、財産分与の対象として主張すべきかについて検討をするのがよろしいかと思います。
弁護士 村本拓哉