紛争の内容
Aさんは、妻Bとの間に中学生の長男Cと、小学生の長女Dの二人の子をもうけ、結婚15年目を迎えていました。ところが、妻BはAさんの両親と折り合いが悪く、親族間の交流もしようとしなかったため、Aさんは妻Bに対し不満を抱いていました。職場の同僚の女性と親密になってしまったAさんは、この女性と不貞関係になってしまい、そのことが妻Bに発覚するに至りました。Aさんは、妻Bとの関係修復は不可能であり、自身の両親も望んでいたことから、妻Bとの離婚を強く望むようになりました。
しかし、妻Bは、Aさんが有責配偶者、つまり離婚の原因である不貞行為に及んでいることから、離婚するつもりはないと拒否をしました。そこで、Aさんは弁護士に依頼し、何とか妻Bに離婚に応じてもらいたいとしました。
交渉・調停・訴訟などの経過
弁護士より妻Bに受任通知を発送したところ、妻B自身も代理人弁護士を就けることになりました。当初の双方の主張は対立していましたが、Aさんも妻Bとの生活に耐えられずに別居を開始し、別居期間中の婚姻費用もきちんと支払うこと、財産分与もきちんと行うこと、慰謝料としてできる限りの対応をすることを条件とし、子どもC及びDの親権を母であるBとして、養育費も相当額払うことを提案しました。
本事例の結末
Aさんは、財産分与としてローン完済済みのマンション1棟を妻名義とし、慰謝料についても別途100万円支払うものとして、妻Bの離婚の同意を得ることができました。妻Bは当初離婚に応じない構えで、調停も覚悟していたところでしたが、無事協議離婚が成立できました。
本事例に学ぶこと
離婚原因がどちらか一方に明確に存在する場合、「有責配偶者」として離婚請求が裁判離婚では認められないのが原則です。ただし、協議離婚であれば、当事者が離婚に納得をしていればよいので、ある程度の経済的譲歩により、相手方が承諾をすることもあります。どこまで譲歩するのかという部分はケースバイケースですが、早期解決を除くのであれば、あえて有責配偶者からの離婚請求について例外的に認められるという条件を満たすよりも、協議離婚で落としどころを見出すというのもあるべき選択肢ではないかと思います。
弁護士 相川一惠