面会交流権とは、離婚後、親権者または監護者にならなかった方が、子どもに面会したり一緒に時間を過ごしたり、文通する権利のことです。
離婚後だけでなく、離婚成立前に別居中の子どもに会う権利も、当然あります。
父母の合意で、面会交流の方法等が決まらない場合は、家庭裁判所の調停や審判で決めることになります。
子供との面会交流を認めるか否かは、子の福祉の観点から判断されます。
面会交流の申立
離婚の話し合いがこじれたまま妻が子どもを連れて実家へ帰ってしまっている場合や、妻が夫に子供をあわせないようにしているといった場合は、離婚成立の前後を問わず、夫は家庭裁判所に面接交渉の申立をすることができます。但し、会うことで子どもに悪影響があるような場合には、権利はあっても面会交流権が制限されます。
面会交流を拒否・制限・停止できる場合
親権者または監護者にならなかった方の親に、子どもを会わせないようにすることは原則として、できません。子どもに対する面会交流権は、明文の規定はありませんが、親として当然にもっている権利で、子どもに会うことまで拒否することはできないと考えられています。
しかし、面会交流を制限・停止することが認められる場合もあります。面会することで、子供に悪影響が出るような場合には、ある年齢に達するまでの面会を禁止する、親権者または監護者同伴の場で会うなどの方法も考えられます。
子どもの面会の際に復縁を迫ったり、金銭の無心をしたりするような場合、勝手に子供と会ったり、子供を連れ去ろうとしたりする場合は、面会交流権の制限や停止を家庭裁判所に申し立てることができます。
また、子どもが面会交流を望んでいるかどうか、その意思を慎重に調査して判断されることになります。
面会交流の条件に納得できない場合
面会交流を拒否された場合や、条件に納得できない場合、家庭裁判所へ面会交流の調停申立をすることができます。調停が不成立であれば、手続きは移行して審判になります。
いったん認められた面会交流も、子供に悪影響を与えたり、子どものためにならないと認められる場合には、一時停止される場合があります。
面会交流のQ&A
- 妻が子どもを連れて自宅を離れ,別居を開始して以降,子どもと会わせてくれません。子どもに会いたいのですが,一体どうすればよいでしょうか。
- ご相談のようなケースでは,大きく分けて二つの方法が考えられます。
一つは,子の監護に関する処分(面会交流)調停を利用する手続です。面会交流調停は,家庭裁判所において,調停委員2名と家庭裁判所調査官が同席する部屋に,親同士が別々に入室し,父子交流の条件を調整するための手続です。
お子さんと定期的かつ充実した面会交流を実施したいとお考えの方は,この手続を利用することになると思います。
面会交流調停は,離婚協議中であっても離婚後であっても利用することが可能であり,調停で話し合いがまとまらない場合には,裁判官に一方的に判断してもらう審判手続に移行することも可能です。
もう一つは,子の引渡し・監護者指定調停,同保全手続(緊急性がある場合)が考えられます。ご相談のケースのように,子どもと別居するに至った場合に,父としても親権を争う意向であることが明確であるときは,早急にこの手続を利用することが肝要となります。スピードが求められるのは,子どもは時間の経過とともに新しい環境に慣れていきますので,時間が経てば,裁判所としても現状を維持するという判断に流れやすいといえるからです。 - 夫から面会交流の調停を起こされました。しかし,夫は婚姻費用を払わないような人ですので,子どもとの面会交流も認めたくありません。夫も婚姻費用の分担義務を守っていませんので,子どもと会わせなくてもよいでしょうか。
- 面会交流の実施と婚姻費用(または養育費)の支払とは,同時に履行しなければならない関係や対価関係にはありませんので,「婚姻費用を支払っていないから,面会交流は認められない」という主張は認められません。
面会交流は,子どもの監護・養育のために適正な措置を求める権利であると考えられており,その背景には,父母の争いを越えて,子どもが両親(母父)との継続的な接触を続けることが健全な発達のために不可欠である,という考え方があると考えられます。
婚姻費用の支払には,親の扶養義務としての監護養育のための費用も含まれておりますが,面会交流の実施とは直接の関連は認められません。
したがって,面会交流の実施と婚姻費用の支払いとは,本来的に区別して考えるべき問題といえます。
ただし,非監護親には,婚姻費用の分担義務がありますので(民法760条),婚姻費用の支払がない場合には,婚姻費用分担調停手続(同審判手続)を利用するなどして,早急に解決を図るべき問題といえます。 - 夫からDVを受けており,子どもと面会交流をさせるのは危険だと思いますが,そのような場合でも,面会交流に応じなければなりませんか。
- 子どもがDV(暴力・暴言)を受けていた場合や,妻(または夫)がDVを受けていた場合,または子どもを連れ去られてしまうおそれが高いような場合には,面会交流を実施することが,子どもの福祉を害することにもなりかねません。
このような場合には,面会交流を実施するかどうかを含め,慎重に判断する必要があります。
実務においても,面会交流を実施することが子どもの精神的な安定を害し,または平穏な生活を妨げ,子どもの健全な成長を害するおそれが高い場合には,例外的に,面会交流を認めるべきではないと考えられております。
このような場合,家庭裁判所における面会交流の調停を実施し,家庭裁判所調査官の下,試行的面会交流の実施やFPICなどの第三者機関を利用した面会交流の実施が不可欠になると思います。
なお,FPICなどの第三者機関の利用には,利用条件や費用の問題もありますので,費用分担の方法などについても十分協議する必要があります。 - 面会交流の条件を調停で決めたのに,相手が約束を守ってくれません。そのような場合には,どうすればよいでしょうか。
- 合理的な理由もなく面会交流の条件を守ってもらえない場合には,①履行勧告の申し出をすることや,②間接強制の申立てを行うことが考えられます。
まず,①履行勧告とは,家庭裁判所が面会交流の履行状況を調査した上,義務者に対して,義務の履行を勧告する制度です(家事事件手続法289条7項)。これは,後で説明する②間接強制とは異なり,強制力はありませんが,比較的簡単な手続であり,費用も一切かからないため,利用価値はあると考えます。
次に,強制執行の一つとして,②間接強制の申立てをすることが考えられます(民事執行法172条)。
子どもは「物」ではありませんので,強制的に子どもを連れてくること(直接強制)は認められておりません。一方で,調停条項で定められた義務を履行していない場合に,義務者に対し,金銭の支払を命令することにより,心理的な強制力を加えることが可能であり,このことを②間接強制といいます。
もっとも,②間接強制が認められるためには,調停条項において,義務の内容が特定されていなければならないというハードルがありますので注意が必要です。
では,義務の内容がどの程度特定されている必要があるかという点については,「面会交流の日時または頻度,各回の面会交流時間の長さ,子の引渡し方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえる場合は…間接強制決定をすることができる」(最決平成25年3月28日・民集67巻3号864頁)とするのが判例であり,月1回,第2土曜日に,時間,受渡しの方法など具体的に実施要領で面会交流を定めた審判が出ていたケースで間接強制(不履行1回につき5万円)を認めております。
以下のようなお悩みがある方は、弁護士にご相談ください。
○悪影響があるため、子供との面会交流を制限したい
○子供との面会を、母親が拒否して受け入れてくれない
○面会交流の条件に納得できない