養育費とは、子どもが未成熟であって経済的に自立することを期待できない場合に支払われる費用です。
養育費は、子どもの衣食住にかかる費用や教育費、医療費、娯楽費などを賄います。
養育費の支払いを受けられる期間の目安としては、20歳、高校卒業までの18歳、大学卒業までの22歳、などが考えられます。

民法の成年年齢の引き下げと養育費に与える影響について

平成30年6月13日、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げる内容の法改正が成立し、2022年4月1日から施行されることになりました。
つまり、2022年4月1日の時点で、18歳以上20歳未満の方(2002年(平成14年)4月2日生まれから2004年(平成16年)4月1日生まれまでの方)は、その日に成年に達することになります(法務省HP参照)。
ただし、法務省HPの記載によれば、

・養育費の取決めがされた時点では成年年齢が20歳であったことからすると、成年年齢が引き下げられたとしても、従前どおり20歳までの養育費の支払義務を負うことになると考えられること、

養育費は、子が未成熟であって経済的に自立することが期待できない場合に支払われるものなので、成年年齢が引き下げられたからと言って、養育費の支払期間が当然に「18歳に達するまで」ということになるわけではないこと、

・子が大学に進学している場合には、大学を卒業するまで養育費の支払義務を負うことも多いと考えられること、
などの意見が記載されており、参考になります(法務省HP参照)。

養育費の算定方法について

養育費の額は、負担する側の経済力や生活水準によって変わります
養育費は、子どもの生活が非監護親の生活水準と同水準を保てる金額と考えられ、「生活保持義務」に基づく支払であるため、基本的には、双方の収入バランスに応じて算定されます。

家庭裁判所では、養育費又は婚姻費用の算定をする際に、「養育費・婚姻費用算定表」を活用しています。
例えば、養育費について5歳の子ども1人の場合、「表1」を用います。
そして、義務者(支払う側)の年収(支払総額)が700万円、権利者(受け取る側)の年収(支払総額)が120万円の場合、養育費の相場は「6~8万円」の幅の枠内に分類できます。
そこで、基本的には、双方の収入の分岐点である8万円に近い養育費が妥当、と考えることができます。

ところで、算定表は、簡易に養育費月額を把握するためにありますので、弁護士の行う実際の交渉、調停等では、具体的な計算式に基づいて主張することや、修正要素(例えば、夫が住宅ローン債務を負っている家に妻子が暮らし続ける場合等に、その事情を一部考慮してもらうなど)を主張することもあります
このように、算定表はあくまで簡易迅速な算定を目的とするものですので、具体的な事情を踏まえた養育費の相場についてはご来所いただき、弁護士にご相談ください。

養育費算定表の令和元年12月改定について

算定表は、令和元年12月23日に改定されたものが最高裁判所から公表されました。
では、旧算定表と新算定表とで、「いったい何が変わったのか?」と言いますと、結論としては、双方の年収によって、支払義務者の支払うべき金額が、従前のものよりも1万円~数万円程度、上がるケースが増えました
具体的には、
子どもの生活費指数が変更されました。
0~14歳:旧養育費算定表の55⇒新養育費算定表の62(引き上げ)
15歳以上:旧養育費算定表の90⇒新養育費算定表の85(引き下げ)
親の基礎収入割合が変更されました。
基礎収入とは、年間の収入から、税金、社会保険料、その他の経費を控除し、家庭において生活費として使用できる金額がどのくらいであるか、算出したものです。
その割合は、
給与所得者の場合:旧養育費算定表の34~42%⇒新養育費算定表の38~54%
このように、総収入に占める基礎収入割合が高くなり、支払義務者の負担が増えたといえます。

養育費算定表の改定がもたらす影響について

では、養育費を既に取り決めてしまった場合に、算定表の改定という事実に基づき、直ちに養育費の増額を求めることができるでしょうか

結論としては、養育費の金額を変更することが認められるのは、事情の変更がある場合に限られるところ、算定表の改定それ自体は、事情の変更とはいえないと解されており、変更できません(裁判所HP参照)。
ただし、例えば、3年前に調停で定めた養育費の金額について、双方の収入に大きな変化があった場合等には、客観的事情の変更があると考えられ、新養育費算定表に基づいて計算をし直したうえ、請求するということは考えられます。

新養育費算定表が見たい方はこちら

新養育費算定表はこちらです。
裁判所のホームページ上、表ごとに開けるようになっております。

養育費の変更について

養育費の支払いは、場合によっては長期間に及びます。その間に、双方の事情が大きく変わることもあります。例えば、子供の進学の問題や支払い側の倒産・失業、受け取る側の失業、再婚などがそれにあたります。基本的には、離婚時に決めた養育費の額や支払い期間を変更することはできませんが、経済的事情が大きく変化した場合には、理由が正当であれば、養育費の増額や減額が認められるケースもあります。

養育費を変更する場合、まずはお互いに話し合い、合意が得られない場合には家庭裁判所に調停を申し出ることができます。子供の養育費がいくらかかるのか確実なことは分かりませんので、意見の相違が見られることも多々あります。

養育費のQ&A

婚姻費用と養育費は違いますか。
婚姻費用とは、夫婦間で分担する家族の生活費をいいます。例えば、夫が会社員、妻が専業主婦、子供が1人の場合、夫の収入の中から、別居中の妻と子供の生活費を支払わなければなりません。これに対して、養育費とは、両親間で負担する子供の生活費です。上の事例でいうと、離婚後は妻の生活費を支払う義務はありませんので、夫の収入の中から、別居する子供の生活費のみを負担することになります。離婚前(別居中)は婚姻費用、離婚後は養育費の問題になります。
養育費の金額はどのように決まりますか。
まず、①権利者(支払われる者)と義務者(支払う者)のそれぞれの収入から、税金や経費を差し引き、自身や家族の生活費に充てられる「基礎収入」を算出します。
次に、②その「基礎収入」のうち、自分の生活費にはどのくらいの割合を当てるか、家族の生活費にはどのくらいの割合を当てるかという案分割合を「生活費指数」という指標をもとに決定します。
そして、①の「基礎収入」に②の案分割合を掛けあわせて、義務者から権利者に支払うべき養育費を算出します。
現在、この基礎収入や生活費指数は定型化されており、裁判所HP養育費・婚姻費用算定表という表に基づき、夫婦の収入のみにより、簡易的に養育費の金額を算出することができるようになっております。
自営業者の収入はどのように決まりますか。
自営業者の収入認定は確定申告書に依拠しますが、必ずしも、課税される所得金額が自営業者の「収入」になるとは限りません。
自営業者の収入認定には、課税所得に加え、現実に支出のない控除費目(基礎控除、生命保険料控除、青色申告特別控除、減価償却費等)を加算した上で、養育費の算出をする必要が出てきます。

以下のようなお悩みがある方は、弁護士にご相談ください。
○離婚した場合、子供の養育費をどれぐらいもらえるのか知りたい
○養育費に関して相手と争いがある
○正当な養育費を受け取りたい
○経済的事情が変わったので、養育費の変更を要求したい

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