離婚原因の中に「悪意の遺棄」というものがあります。
「遺棄」とは、正当な理由なく、夫婦の同居義務、協力義務、扶助義務に反する行為をいい、
「悪意」とは、単に、同居義務違反などの事実を認識しているだけでは足りず、夫婦関係の破たんを意図していたり、または破たんを容認する意思とされています。
例えば、別居して生活費を渡さない(同居している場合でも、生活費をまったく渡さない場合、悪意の遺棄にあたることがあります)、理由もないのに同居を拒否するなどの場合、悪意の遺棄にあたる可能性があります。
半面、単身赴任をしている、夫のDVによる妻の別居、夫婦関係が破たんした後の別居などは悪意の遺棄にはあたりません。
悪意の遺棄にあたる/あたらない、とする裁判例は?
「悪意の遺棄」にあたると認めた判例として、半身不随の身体障害者の妻を置き去りにして長期間別居を続け、その間、妻への生活費を送金しなかった場合(浦和地裁昭和60年11月29日判決)などがあります。
一方、婚姻関係破綻の主たる責任は妻が負い、妻が夫から同居や扶養を拒否されたのは自ら招いたものであるとして、夫が妻との同居を拒み、扶助をしなくても悪意に遺棄には当たらないとした判例(最高裁昭和39年9月17日判決)があります。